前回は、熱中症の基礎として、分類とそれぞれの熱中症の大まかな症状をまとめました。第2回目は、熱中症の中でも中重症にあたる「熱疲労」と「熱射病」にフォーカスして対比したいと思います。
熱中症の基礎知識はこちらを参照してください。
熱疲労と熱(日)射病の症状比較
「熱疲労」と「熱射病」の症状を以下の5項目で対比したいと思います。
- 顔色
- 汗
- 皮膚
- 体温
- 脈拍
おおまかな症状を以下の表にまとめました。面白いほど逆の症状が出ます。
顔色 | 汗 | 皮膚 | 体温 | 脈拍 | |
熱疲労 | 蒼白 | 大量 | ベトベト | 高い | 弱早 |
熱射病 | 紅潮 | 殆ど無し | カサカサ | とても高い | 強早 |
顔色
「熱疲労」は循環機能が低下した状態なので、顔面蒼白になります。脳に十分な血液も回らないのでかなりボーッとする状態になると思います。
「熱射病」は体温調節ができないので、発汗ができず体温を下げることができないので、顔面も紅潮します。
ただし、夏は日に焼けているので、もしかしたらこれだけでは判断がつかないかもしれません。
汗と皮膚
「熱疲労」は汗を大量にかくので、皮膚はその汗でベトベトです。
一方、「熱射病」は汗をほとんどかかないので皮膚はカサカサです。
汗をかいているうちは、命に別状はないかもしれません。
専門学校で教鞭をとっているときに、この対比問題は必ず出したのですが、なぜか「熱射病」を「サラサラ」と解答する学生が多かったですね。「カサカサ」と「サラサラ」では全く違うので当然間違えです( ̄ー ̄)
「サラサラ」はみずみずしいですが、「カサカサ」はみずみずしさは全くないですよね(+_+)
ここはかなり重要な項目だと思います。汗が出ていないようなら、かなり危険と考えていいと思います。
体温
両者とも体温は上がりますが、より上がるのは「熱射病」です。40℃を越えることも考えられます。肌を触診すると、汗をかいていないのでその熱そのものを感じるはずです(高温)。
一方、熱疲労はそこまでは上がらず、38~39℃程度でしょうか。体温自体は高熱ですが、汗を大量にかくので触るとヒンヤリすることもあります。
この後の処置で出てきますが、熱射病の場合、かなりの高温なので暑がると思います(意識があれば)。一方、熱疲労も高熱ではあるが、汗をかくので寒いと感じることもあるようです。
脈拍
脈自体は両者とも速くなりますが、循環機能が低下している「熱疲労」は脈が弱く、「熱射病」は呼吸循環器が破綻しているので脈も強くなります。
熱疲労と熱(日)射病の処置比較
- 共通する処置
- 相反する処置
共通する処置
共通する処置は基本的には2つ
- 涼しいところに移動する
- 水分補給をする
当たり前と言えば、当たり前だと思います。ほぼ同時に行います。
水分補給に関しては、次回以降にまとめたいと思います。
相反する処置
相反する処置は
- 休ませる体位
- 冷やすか、温めるか
休ませる体位
熱疲労は、顔面蒼白で脳に血流がいかない状態です。よって、頭を下げるショック体位が妥当です。
ショック体位
一方、熱射病は、顔面紅潮で血流が脳・顔に集まった状態なので、頭を上にするファウラー体位を取ることになります。
ファウラー体位
熱射病が進み、昏睡状態であれば、昏睡(coma)体位が必要です。
昏睡(COMA)体位
冷やすか?温めるか?
熱疲労であろうと熱射病であろうと熱中症(熱失神も含む)は、基本的には体温が上がるので、身体を冷やすのが適当です。
上記にも記載しまいたが、熱疲労の場合、大量の汗をかくので、体温が下がり、寒く感じることも考えられます。その場合は、温めるという選択肢もあります。
患者が、暑いと感じていれば冷やして、寒いと感じていれば温めるということになります。チームでは、毛布は常備しておきましょう。
まとめ
- 熱疲労と熱射病の5つの相反する症状(顔色・汗の量・皮膚の状態・体温・脈拍)
- 共通の処置は、「涼しい場所への移動」と「水分補給」
- 相反する処置は
- 熱疲労は「冷やすor温めてショック体位」
- 熱射病は「冷やしてファウラー体位」
参考
・トレーナーズバイブル@Arnheim
・スポーツ栄養学@鈴木志保子
・国際救急救命協会emargency care資料
・日本スポーツ協会HP