ここ2回で筋肉の5つの用語(起始・停止、主働筋・拮抗筋・協働筋)と4つの役割についてまとめましたが、「機能解剖学の基礎」の最終回はレジメの8, 筋収縮様式についての話です。
第1回目機能解剖学レジメ
3つの筋収縮様式
筋肉は収縮することで、張力(筋力)を発揮するが、筋収縮様式には以下の5種類があります。特に重要なのは等尺性、等張性、短縮性、そして伸張性筋収縮で、今回はこの4種類にフォーカスして話を進めます。等速性と増張性は特殊なので、折を見て(簡単に触れますが)。
- 等尺性筋収縮(Isometric Muscle Contraction)
- 等張性筋収縮(Isotonic Muscle Contraction)
- 短縮性筋収縮(Concentric Muscle Contraction)
- 伸張性筋収縮(Eccentric Muscle Contraction)
- 等速性筋収縮(Isokinetic Muscle Contraction)
- 増張性筋収縮(Auxotonic Muscle Contraction)
等尺性筋収縮(Isometric Muscle Contraction)
等尺性筋収縮は、筋長に変化が無いまたは関節が動かない(不変)状態で力を発揮すること。言い換えると、筋力と抵抗(通常、バーベル等重量物)が等しい状態です(筋力=抵抗)。
例えば、壁を押して力を発揮している状態やベンチプレスでラストの1回を挙げようと踏ん張って頑張っている(バーベルは止まっている)状態などです。
英語も合わせて覚えるべき用語で「Isometric 筋収縮」と言います。Iso- は「等しい」を表す接頭辞、metricは mesure で長さを表す用語です。
等張性筋収縮(Isotonic Muscle Contraction)
等張性筋収縮は、通常の運動に当てはまるのでわかりやすい。筋長が変化(短縮or伸張)しながら、または関節が動きながら(可変)力を発揮することですが、むしろ細分類した短縮性筋収縮と伸張性筋収縮で覚えた方が良い。-tonic は張力を表します。
短縮性筋収縮(Concentric Muscle Contrction)
読んで字のごとく、筋肉が短縮しながら力を発揮する筋収縮様式で最もわかりやすい。トレーニングでは、ベンチプレスやスクワットの挙げる(押す)局面、ラットプルダウンだと引く局面にあたります。筋力が抵抗を上回ることになり(筋力>抵抗)り、求心性筋収縮様式とかポジティブと言うこともああります。
con- は共を表す接頭辞、centric は中心を表す用語。concentration(集中)と語源は同じで「中央に向かう」から転じて、「短縮」と捉えていいでしょう。
伸張性筋収縮(Eccentric Muscle Contraction)
こちらは最初混乱するかもしれません。筋肉が伸張しながら力を発揮する様式で、短縮性筋収縮と逆の関節運動になるますが、主働筋は変わりません。
トレーニングでは、ベンチプレスやラットプルダウンの戻す局面やスクワットのしゃがむ局面などです。抵抗が筋力を上回ることになり(筋力<抵抗)、いわゆるネガティブです。遠心性筋収縮様式とも言います。
抵抗に対抗し耐えるわけですが、抵抗に負けるので徐々に戻されていく。綱引きで劣勢の時はこの伸張性筋収縮で耐え頑張っているわけです(優勢時はコンセントリック、拮抗しているときはアイソメトリック)。
ec- は外を表す接頭辞、eccentricは、むしろ「普通ではない」と意味で使わますが、「離心」と言う意味もあります。離心から伸張は無理がありますか?
等速性筋収縮(Isokinetic MC)と増長性筋収縮(Auxotonic MC)
等速性筋収縮は、短縮性であろうと伸張性であろうと、張力の強さに関わらず、筋収縮速度が一定で通常では起こりえない。専用のコンピュータ制御のマシーンが必要となります。
また、増張性筋収縮は「長さが増せば張力が増す筋収縮」で、簡単に言うとチューブトレーニングです。auso-は増加、加速、成長を表す接頭辞。
筋収縮様式のまとめ
等尺性筋収縮 | Isometoric Muscle Contraction |
等張性筋収縮 | Isotonic Muscle Contraction |
短縮性筋収縮 | Concentoric Muscle Contraction |
伸張性筋収縮 | Eccentoric Muscle Contraction |
等速性筋収縮 | Isokinetic Muscle Contraction |
増張性筋収縮 | Auxotonic Muscle Contraction |
筋収縮様式は、筋肉の構造や収縮のメカニズムが理解できるとわかりやすいかもしれません。これらは筋生理の記事でまとめる予定。
全7回で機能解剖学の基礎の話をしましたが、これを前提に各論(部位別機能解剖学)に入っていく予定です。これまでの話は、今後の学問において前提(当たり前)となるが最重要、最初が最もきついのでしっかり復習をして理解を深めていただきたいですね。
引用・参考
・身体運動の機能解剖@Thompson,Floyd
・トレーニングの科学@石井直方
・ストレングス&コンディショニングⅠ理論編@NSCA JAPAN
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