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【ボクシング】ウエイトトレーニング再考~改めて何を期待できるのか?

2021年5月3日

ボクサーのトレーニングは以下の3本柱です。

  1. 練習(ジムワーク)→技術・戦術および専門的全身持久力向上目的
  2. ロードワーク→全身持久力向上,コンディショニングというよりも練習の位置づけ
  3. ウエイトトレーニング→筋力・パワー養成および可動域の確保、コンディショニング第1位

前回の記事では、ジムワークで向上できる体力を考察しました。今回は、ウエイトトレーニングで向上できる体力について考えたいと思います。ウエイトトレーニングに関しては、ボクサーというよりもアスリート全般として捉えていただければいいと思います。

ボクサーにウエイトトレーニングは必要か? を考察する記事はこちら

ボクサーのウエイトトレーニングに関する考察記事はこちら

ウエイトトレーニングの名称について

NSCA Japan(ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編))では、ウエイトトレーニングの名称には以下の4つを使用しています。

  1. レジスタンストレーニング
  2. ストレングストレーニング
  3. ウエイトトレーニング
  4. 筋力トレーニング

レジスタンストレーニング

負荷抵抗をかけるトレーニング全てのことを指す。スポーツ医学および運動生理学系の研究でもよく使用されている。

レジスタンス(resistance)は抵抗を意味し、NSCAの定義通りとなり、最も大きなカテゴリーに位置するかもしれません。厳密には、ウエイトトレーニングや自重トレーニングはレジスタンストレーニングに属することになるのでしょう。

ストレングストレーニング

競技スポーツにおいて、傷害予防とパフォーマンス向上を目的とした場合のトレーニング名称である。スポーツの目的別にピリオダイゼーションの計画を基に実施される。

ストレングス(strength)は力や筋力を意味します。NSCAはストレングスという用語に特別感をもたらせていますが、特にアスリートのためのトレーニングとして使用する必要は無いと思います。むしろ、一般的には最もわかりにくい用語で、直訳して「筋力トレーニング」でいいと思います(^^♪

・ストレングス&コンディショニングの定義に関する詳細記事はこちら

ウエイトトレーニング

バーベル、ダンベル、マシン等の重量物を用いるトレーニング名称である。一般的なフィットネスにおいてよく用いられる。

ウエイト(weight)は重量(物)を表すので、定義通り、抵抗にバーベルやダンベルの重量物を使用するトレーニングです。中上級トレーニーの方々には最もしっくりくる用語だと思います。

筋力トレーニング

筋力強化のためのトレーニング名称として従来からよく使用されている。特に自体重や徒手抵抗を用いるトレーニングを意味する場合が多い。

最も一般的な用語で、上記のレジスタンストレーニングとして捉えていいと思います。

どの用語が最も適切なのか?

個人的には、特に分類する必要は無いと考えているので、この4つの用語は同義語としています。専門家同士(トレーナー, S&C)ならストレングスを、対象が一般の方やアスリートなら「ウエイト」や「筋トレ」を使用すればいいのではないでしょうか。相手が最も理解できる言葉で対応するのがいいと思います。

ここでは、ウエイトトレーニングとして話を進めていきます。

ウエイトトレーニングの目的・効果

改めて、コンディショニング・トレーニングの目的は

  1. 競技パフォーマンスまたは体力の向上
  2. 傷害予防

・ストレングス&コンディショニングの定義に関する詳細記事はこちら

で、コンディショニング第1位でもあるウエイト(ストレングス)トレーニングの目的は、

  1. 筋量増加
  2. 最大筋力向上
  3. 一般的パワー向上
  4. 柔軟性の向上
  5. 関節の正しい動かし方の修得

辺りになると思います。特に1と2が最大の目的となります。

最大筋力向上の主要2要素(他にもあるがここでは割愛)

  1. 筋量増加
  2. 神経系の改善

筋量増加

最大筋力を決定する第1要素は、「筋量」で、厳密には筋の横断面積になります。1㎠あたり5~6kgの力があり、これに性差(男女差)はありません。

ただし、ホルモンの関係上、男性の方が筋肥大しやすく、その筋量差が男女の筋力差となります。女性のトップビルダーやリフターレベルは類まれな才能と血の滲む努力が成すものだと考えられます(そう簡単にムキムキにはならないので、女性もウエイトを積極的に実施し、その恩恵を受けましょう)。上半身に筋肉が付きにくい女性でありながらベンチプレス100kgは想像を絶し、畏怖の念を抱きます。

トレーニングを継続してから3ヶ月ほどで筋量増加が見込まれると言われますが、筋量が増えてきたら中級トレーニーかもしれません。自信が付き、精神的にも強くなる可能性もあります。

神経系の改善

もう一つの重要要素は「神経系の改善」で具体的には、以下の2つでしょう。

  1. 運動単位の活性
  2. 発火頻度の増加

トレーニング初期の筋力向上は、まずこの(筋肉に命令を与える)神経系の改善が見られます。簡単に説明すると、日常生活では最大筋力の30%程度しか使用されていないので、さぼっている神経群があるわけです。過負荷を掛けてさぼっているまたは眠っている神経系を起こす(活性化)ことで筋力が向上します。

中上級のトレーニーなら、追い込んだり(All Out)、高負荷(最大筋力の90%程度、4回程度で限界になる程度の負荷)トレーニングで効果が出ると言われています(ポテンシャルを引き出す)。

最大筋力が重要でない競技であっても、神経系の改善のために高負荷トレーニングは行ったほうがいいと思います。神経系が改善されスムースになると動作の改善が見込めます(今までできなかった動作ができるようになる可能性)。

ただし、高負荷トレーニングはリスクが伴うので、それなりの筋量と正しい技術が必要です。むやみに高負荷を使用すると傷害に繋がり、必然的にパフォーマンスも低下することになります。

運動単位や発火頻度の詳しい説明は、折を見て。

一般的パワー向上、その定義は、筋力 x 速度

アスリートであれば、ウエイトトレーニングで一般的パワーを求めることになるでしょう。むしろ、このパワーが競技パフォーマンスを決定する最重要要素のひとつと考えられます。パワーは「力や筋力」と捉われがちですが、

パワーの定義は、「筋力 x 速度」または、より専門的に言うと「単位時間時間当たりの仕事」です。一般的には「爆発的筋力」や「瞬発力」と言った方がわかりやすいかもしれません。

パワーは最重要と書きましたが、定義からもわかるように先に「筋力」を向上させる必要があります。さらに「筋力」は「筋量」で決まるので、一般的にウエイトトレーニングは

  1. 筋肥大(最大筋力の70~80%でAll Out)
  2. 最大筋力(高負荷トレーニング90%程度)
  3. 一般的パワー(クイックリフトやプライオメトリクス、中高負荷トレーニング等)

の順番で計画することがスタンダードです(これをピリオダイゼーションと言います)。パワーのみのトレーニングに走りすぎると、ケガをしたり、効果が低下することも考えられます。

・ピリオダイゼーションの基礎に関する記事はこちらを参照してください。

・体力・フィットネスに関する記事はこちら

柔軟性・ROMの改善および関節動作の習得

乱暴な言い方をすると、筋肉は過負荷を掛ければ肥大し筋力も向上します。なぜ、ウエイトトレーニングにおいては、フォームが重要なのか?各エクササイズのスタンダードフォームは、最も安全に筋肉に過負荷を掛けることができるからです。

最も安全というのは、「関節に対して安全」、すなわち「関節に対する負荷が最も小さくなる」ということです。

まず「自重で(上半身なら軽量)、正しいフォームを習得する」、これは正しい関節の動かし方を学ぶことになります。正しい関節(特に股関節と肩関節・肩甲骨)の動かし方を習得するということは、最も機能的な動きを習得することにもなります

さらにその動きに負荷をかけ筋力を高めるのがウエイトトレーニングの最大の目的です。言い換えると、関節を最も安全に効率よく動かし、かつ筋力を高めることが強化になるわけです。

*これらを効果的に計画、実施、評価するのが、ストレングス&コンディショニングコーチの役割です。

また、ウエイトトレーニングは基本的には、フルレンジで行います。これにより柔軟性の向上が見込め、「傷害予防」や「動作の改善」に繋がります。柔軟性が乏しいと動作に制限が出てしまい、パフォーマンスに影響が出ると考えられます。

よほどの理由がない限り、ウエイトトレーニングはフルレンジで行うべきです(過度の可動域もまた危険ではありますが)。

前回のロードワークの記事でも可動域の重要性を説きました。ウエイトでもウォームアップセットの段階で柔軟性を獲得してからメイントレーニング(過負荷)に入っていただきたいものです。

柔軟性・可動域に関する記事はこちら

傷害予防に関して

ウエイトトレーニングで筋力を向上することで、関節も強化され、傷害のリスクを低くすることができます。

ウエイトトレーニングの効果が「筋力系競技」に比べ、わかりにくい「持久系競技」や「技術重視系競技」の場合は、むしろこの傷害予防を目的にウエイトトレーニングを取り入れるといいと思います。

まとめ

ウエイトトレーニングの目的は、

  1. 筋量増加
  2. 筋力向上
  3. 一般的パワー向上
  4. 柔軟性の確保
  5. 関節動作の習得

などがありますが、パフォーマンスだけでは無く、傷害予防にも重点を置いてトレーニングすることが重要です。

・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・トレーニング指導者テキスト理論編@JATI

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