機能解剖学

【機能解剖学の基礎】脊椎(環椎・軸椎)の構造、生理的弯曲(前弯・後弯・側弯)

2020年5月23日

前回は脊柱の構成を説明しました。今回は、脊椎の構造についてです。脊椎の名前はもちろんですが、骨の部位名・ランドマーク名を覚える必要があります(下記参照)。

まずは、「機能解剖学の基礎」を押さえてください。

生理的弯曲の3種類を理解する

脊柱は、真っすぐではなく、所々で曲がっています。これを「生理的弯曲」と言い、この弯曲により脊柱にかかる負荷(力)が分散されます。「クッションの役割」を担うわけです。

生理的弯曲は以下の3タイプ

  • 前弯
  • 後弯
  • 側弯

前弯と後弯

上記の図(脊柱を左からみた図)を見ると、頸椎と腰椎は一部が前に突き出ています(反った状態)。これを前弯と言います(一般的には、平背(へいはい)やフラットバック)。

逆に胸椎と仙骨・尾骨は後ろに突き出ています(丸まった状態)。これを後弯と言います(一般的には、円背(えんぱい))。

通常この弯曲は起こりますが、過剰になると痛みを伴うこともあります(腰痛等)。

側弯

生理的弯曲にはもう1種類、側弯があります。上の図だと、胸椎の辺りは左に出ているので「左側弯」、腰椎の辺りは右に出ているので「右側弯」と言います。一般的に歪み(ゆがみ)と言われるものです。

骨の歪みと言われることが多いですが、実際に骨が歪んでいたり、変形していることは稀です。もしこのような状態であれば、トレーナーレベルでどうこうできるレベルではありません。速やかに整形外科に送りましょう。もし自身で改善しようとするならば、それはうぬぼれです。

ほとんどの場合、この歪みは筋肉のアンバランス(左右差)から起こります。これを改善することを得意とするトレーナーさんは増えていると思います(パーソナルトレーナーのニーズのひとつ)。

脊椎の構造(C3~L5)

まず覚えるべき部位は、

  • 棘突起
  • 横突起
  • 椎孔
  • 椎体
  • 椎弓(根)
  • 関節上突起(面)
  • 関節下突起(面)

部位の説明はこの記事の最後にまとめてあります。

頸椎

一見、頸椎は胸椎や腰椎とはかなり違う構造に見えますが、C3~L5は同じです。*頸椎・胸椎・腰椎は上(棘突起)が後部で、下(椎体)が前部です。

一般的に脊椎(背骨)として触れられる部位が「棘突起」です。頸椎の棘突起の先は二股に分かれていて、当然左右の筋群がそれぞれに付着します。*棘はトゲです。

これも頸椎(特に上位)だとわかりにくいですが、胸椎と腰椎だとわかりやすいのが「横突起」、そのままですね。頸椎には穴が開いており「横突孔」と言います。「孔」は貫通している穴を表します(下記参照)。

椎孔」は脊髄の通り道の孔(あな)、脊椎の集まりは「脊柱」ですが、椎孔の集まりを「脊柱管」と言います。

胸椎と腰椎

胸椎

腰椎

胸椎と腰椎の形は似ています。通常、脊椎の図を描く場合は、胸椎か腰椎をイメージして書くと思います。棘突起、横突起、椎孔はわかりやすいですね。

椎体」は英語だと「body」で、脊椎の中心・核になる部分です。椎体の上に椎間板(次回説明予定)が乗っています。

上関節突起または面と、一つ上の脊椎の下関節突起または面と関節を成しています。「椎弓」は次回の脊柱分離症のところで説明します。

環椎と軸椎

C1と環椎、C2を軸椎と言いますが、見てわかるようにC3以下とは構造が違います。

環椎

**環椎と軸椎は、上記(頸椎・胸椎・腰椎)とは反対向きです。上は前部、下が後部です。

前の弓なりの部分が「前弓」で、その中央の突起が「前結節」です。 後ろも同じように「後弓」と「後突起」です。お分かりかと思いますが、環椎には「棘突起」がありません。また、椎孔が非常に大きいので椎体もありません。

英語で「Atlas」と言いますが、これはギリシャ神の名前です。地球を担いでいる神様で、後頭骨ひいては脳を地球として捉えていることから命名されたと思います(それだけ重要と言うこと)。

アトラス神

軸椎

全体的には、C3と非常に似ています。お分かりと思いますが、軸椎には椎体の部分に「歯突起」が付いています。この歯突起が環椎と関節を成し、読んで字のごとく軸となり頸椎の回旋を担います。

脊柱の関節名

関節名は、基本的には骨と骨の名前を合わせて使用されることが多いです。脊柱では基本通り

  • 環椎後頭関節(C1-C0)*後頭骨は正式にはOccipital boneでOccと表記するが、環椎の上なので便宜上C0と書くこともあります。
  • 環軸関節(C1-C2)
  • 椎間関節(C2-C3以下)*場所はL4-L5とか明記する必要ありです。

脊柱と骨盤に関する記事はこちら

覚えるべき骨の部位・ランドマーク

赤マーカーは、特によく出てくるのなるべく早く覚えましょう!

骨の部位
名称意味・定義
頭(とう),head丸まった先端部分
体(たい), body骨の本体となる部分
底(てい), base骨の底面となる部分
頚(けい), neck長骨で頭と体の境となるくびれの部分
突起(とっき), process突き出た部分
棘(きょく), spineトゲ上に尖っている部分
尖(せん), apex細く尖った先端部分
結節(けっせつ), tubercle骨の表面がこぶ状に盛り上がった部分
切痕(せっこん), notch切れ込んでいる部分
溝(こう), groove神経・血管・腱などが通る細長い溝
孔(こう), foramen骨を貫通する孔(あな)
口(こう)腔への入り口
腔(くう), cavity骨内部の空間
洞(どう)骨の内部にある大きなくぼみ
窩(か), fossa骨の表面の一部が浅くくぼんだ部分
顆(か), condyle骨の一部がこぶ状に盛り上がった部分
稜(りょう), crest骨の表面の一部が山の稜線のように盛り上がった部分
隆起(りゅうき), eminence隆起した部分
蓋(がい)蓋をかぶせるように空間をふさぐ骨
弓(きゅう), arch弓のように弯曲したアーチ状の部分
縁(えん), border面を分ける縁
面(めん), plane/surface縁を境に分けられる平面な部分
粗面, tuberosity骨の表面でザラザラした粗い部分
関節面, joint surface別々の骨同士が連結する面
転子, trochanter大腿骨にある大きな突起
角, angle
端, end骨の末端部分
包(ほう)器官の一部の空間を包み込んでいる部分
鞘(しょう)ひも状のものを包んでいる覆い

引用:骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆

まとめ

  • 生理的弯曲(前弯・後弯・側弯)
  • C3以下の基本的構造
  • 環椎と軸椎
  • 脊柱の関節
  • 骨の部位(ランドマーク)

・身体運動の機能解剖@Thompson/Floyd
・骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・運動療法のための機能解剖学的触診技術(上肢編)@林典雄
・骨単・肉単@河合良訓(監修)

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